研究科長あいさつ 医歯薬学総合研究科長 川上 純 医歯薬学総合研究科長を拝命しているリウマチ・膠原病内科の川上 純です。医歯薬学総合研究科の使命はトランスレーショナル・リバーストランスレーショナル研究を発展させ、かつ、次世代の研究者を育成することにあります。しかしながら、長崎大学に限らず、全国的に医学医療系大学院は、医療業務の煩雑化による研究時間の減少、基礎系大学院生の減少、新専門医制度の開始に伴う臨床系社会人大学院生の動向などの課題を抱えています。研究環境に関しても、ゲノム解読は終了し、多階層のオミクス情報を繋ぐテータ駆動型マルチオミクス研究の進捗など、研究手法の高度化が進み、学部や研究科横断的な学際的な共同研究体制の構築が必須と思われます。また、これらを反映して、研究から得られる情報量も急速に増加し、今は情報爆発時代(information explosion age)の研究環境とも言えます。 しかしながら、研究環境については、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科は、医学、歯学、薬学、保健学そして熱帯医学と放射線医学を抱える総合研究科としての大きなメリットを持っています。これらから21世紀COE、グローバルCOE、リーディング大学院、卓越大学院等の大学院発展の推進力となった大型予算の獲得や新しい修士課程や専攻の設置(長崎大学・福島県立医科大学共同大学院災害・被ばく医療科学共同専攻、先進予防医学共同専攻-千葉大学、金沢大学、長崎大学共同大学院-)、TMGH校の設置開設などが創出されました。今年の10月からは、地球規模の課題に社会学、経済学、工学、環境学、医学、データサイエンスなどのそれぞれの専門家が学問領域を超えて取り組み、俯瞰力と実行力を備えた実務家リーダーを養成する、プラネタリーヘルス学環が、全学的組織として開設されますが、そこにも医歯薬学総合研究科は、積極的に関わります。 医歯薬学総合研究科は、感染症、放射線に次ぐ第三の“長崎ブランド”の確立と研究科全体のさらなる発展を目指しての大学院研究者の分野ごとのコアユニット化を進め、現在は6つのユニット(先導医療研究コア)が形成されています。これらを新たな研究の柱にまで発展させるべく努力する所存ですが、医歯薬学総合研究科という組織は、学部横断的な共同・連携研究に適しており、そこに2017年に設置された産学共同研究プラットフォーム&ゲノム医療研究推進室(iPOP)も、共同・連携研究を推進するには非常に有用で、かつ、ユニークな組織です(医歯薬、医学部、歯学部、薬学部、病院のHPにリンクを貼っていますのでご参照下さい)。私はこのような研究科のソフトを活用する「チームパシュート型共同研究」が今後のkeyと考えております。 医歯薬学総合研究科は2002年の発足から21年目に入ります。数年前から充足率は100%を超え、順調に次世代研究者の育成がなされていますが、最初に述べたような社会環境の変化に応じて、既存システムの再生・整理や新たなアイディアの取り入れなども検討する時期にきているかもしれません。時代の潮流である「人工知能とビッグデータ」、「データ駆動型サイエンス」、「国際化」、「産学官連携」、「総合知」などを視野に入れつつ、医歯薬学総合研究科構成員の皆さんと一緒に、知恵を絞って行きたいと考えております。