長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 地域医療協働センター センター長　前田　隆浩

　医療技術の進歩は止まるところを知りませんが、その一方で高齢化や医療資源の偏在、健康格差の拡大などの社会問題は蓄積し、それらを反映して地域医療を取り巻く環境は大きく変化しています。医療やケアに対するニーズが高度化・多様化する中、医療者には以前にもまして大きな期待が寄せられており、地域ニーズに応えられる人材の育成、そして健康寿命の延伸を目指した社会医学・予防医学研究が強く求められています。
　大学には高度医療人の教育機能とヒトの健康について探求する学際的研究機能が集中しており、地域には実践的な包括的医療・ケアを学ぶとともに、社会医学・予防医学研究を実行し研究成果を還元していく多様なフィールドがあります。地域と大学が長期的な目標を共有し、連携を深めて継続的な研究教育を推進することで、複雑な課題に対して普遍的な知見を導き出し、地域社会の課題解決につながる成果をもたらすことが期待されます。そして、こうした地域基盤型の取組自体が、地域ニーズに応え地域住民の健康と福祉に貢献できる医療人の輩出につながります。
　長崎大学では、組織横断的な地域医療に係る教育及び研究を推進することを目的に、地域医療協働センターを大学院医歯薬学総合研究科に設置しました。本センターを基盤として、人的交流を図りながら地域と大学の教育・研究グループとの協働を進め、社会医学・予防医学研究と地域包括医療・ケア教育の推進を主軸として活動を展開し、地域イノベーションの創出と地域活性化を目指します。